50〜70代のための「足のコア」入門
——足部内在筋を鍛えて、つまずき・ふらつきを減らす“実践ガイド”
最近こんなこと、ありませんか?
・夜中にトイレへ行くとき、ふらつくことが増えた
・スリッパで小さく「グキッ」となってヒヤッとした
・階段の最後の1段でつまずきそうになるその“最後の踏ん張り”を担っているのが足部内在筋(足のコア)。小さな筋肉ですが、土踏まずのアーチを支え、床をつかむ感覚や体の揺れの微調整に深く関わります。専門家の間では「フットコア」という概念で整理され、腹のコアと同じく“姿勢の要”として位置づけられています。PubMed+1
足部内在筋が弱ると、なぜ転びやすくなるのか(仕組み)
人はよろめきそうになった瞬間、足趾(あしゆび)で床をそっと押して姿勢を立て直します。ところが加齢では内在筋がやせ、足趾の力が若年より約35%低下することが示されています。踏ん張る“最後の一押し”が足りないと、一歩が出ない/体を止められない——結果として転倒につながりやすくなるのです。JOSPT+2PubMed+2
さらに、足趾屈筋力の弱さや足趾の変形(外反母趾など)は、高齢者の転倒リスク上昇と独立して関連することが報告されています。言い換えれば、足の指先の筋力と形は“転ばない体”に直結する重要ポイントです。PubMed+1
科学的根拠:足部内在筋トレーニングで何が良くなる?
- 機能・バランスが向上
足部内在筋トレーニング(IFM)は、アーチ機能を改善し、動的バランス(Yバランスなど)を高めるとする系統的レビュー/メタ解析が出ています。PMC+1 - 短期間でも効果が出る
代表的な**ショートフット(SFE/ドーミング)**は、タオルギャザーよりも内在筋を的確に使わせやすいとする比較研究があり、4週間で静的・動的バランスが改善した報告も。Human Kinetics Journals+1 - バランストレーニングと組み合わせると相乗効果
バランス訓練にSFEを併用した群は、単独より静的・動的バランスがより改善しました(ランダム化比較試験)。PMC+1 - 筋力は年齢が高くても回復可能
高齢者を対象に、足に特化したプログレッシブ抵抗トレで足趾屈筋力が有意に向上。「もう遅い」ではないことが示されています。PubMed
自宅でできる“安全・簡単”セルフチェック(50〜70代向け)
1)片脚立ち10秒(壁・イスに手を添えて安全に)
靴下を脱いで、片脚で最大10秒。不安定ならすぐ中止。このテストは中高年の死亡リスクとも関連があるとされ、健康度の目安になります(※観察研究)。無理は禁物ですが、現状把握に役立ちます。British Journal of Sports Medicine+1
2)足趾プレスの感覚チェック(座位)
椅子に座り、親指だけ軽く床を押す→他4趾だけ押すを交互に。片方がほとんど押せない、またはつりそうなら、内在筋の“配線”が眠っているサイン。
3)段差の踏ん張り
10〜15cmの台で片脚上がり下りを左右5回。土踏まずや親指付け根がつりそうなら、当面のトレーニングは回数を控えめに。
まずは1日5〜8分:足部内在筋の“ミニ・ルーティン”【週3〜5日】
準備:滑らない床(裸足 or ノンスリップ靴下)。近くに支え(キッチン台・壁)。
痛みが出たらその場で中止。糖尿病で足の感覚が鈍い方/外反母趾が強い方は、座位中心・小回数から。
① ショートフット(SFE/ドーミング) 60–90秒×2
土踏まずを“すうっと”持ち上げる。足指は握り込まない。まず座位→慣れたら立位。タオルギャザーより内在筋を的確に狙いやすいのが強み。Human Kinetics Journals
② トー・ヨガ(親指↑/他4趾↑) 各10回×2
親指だけ上げる→下ろす、他4趾だけ上げる→下ろす。神経‐筋の再学習。できなくても手で補助しながらOK。フットコアの“配線”を起こす練習です。PubMed
③ 親指プレス+呼吸 6秒×6回
立位で母趾の腹で床をそっと押し、息をゆっくり吐く。押しすぎてつらない範囲で。
④ タオルつかみ(導入用) 30秒×2
SFEが難しい方の手がかりとして。母趾球は床に残し、指先だけでたぐり寄せる感覚をつかむ。PMC
⑤ カーフレイズ(つま先下に薄いタオル) 10回×2
母趾球に体重をのせて踵を静かに上下。ふらつく日は壁タッチで。ふくらはぎの張りが強い日は回数減でOK。
4週間のステップアップ(合計5〜8分×週3〜5日)
- 1週目:感覚を起こす
SFE 60秒×2/トー・ヨガ各10回×2/親指プレス6回 - 2週目:安定させる
1週目+立位SFE 90秒×2/カーフレイズ10回×2 - 3週目:少しだけ難しく
SFE 90秒×2/壁タッチ片脚SFE 20秒×左右2/カーフレイズゆっくり10回×2 - 4週目:日常動作へ橋渡し
上記+片脚立ち5〜10秒×左右3(必ず支えあり)
歩行中に**“母趾の腹でそっと押す”感覚**を2〜3歩だけ入れてみる
うまくいっているサイン:片脚で“1〜2秒でも安定して立てる”、階段の下りで踏ん張り感が出てきた。
変化が乏しいときは、まずSFEのフォームを見直しましょう(握り込み過ぎは×)。SFEは内在筋を狙い撃ちしやすいことが示されています。Human Kinetics Journals
シューズ・インソール・地面の選び方(失敗しない基本)
- つま先の余裕は8〜10mm。母趾球が当たる靴は即候補外。
- インソールは**“杖”だと思ってOK。SFEが安定するまで併用し、徐々に自分の内在筋**で支える割合を増やす。
- 地面は安定床 → 芝・薄いマット → 不安定マットの順に段階を。ふらつく日はすぐ戻す。
- 頻度は短時間×高頻度がコツ。痛みゼロ〜違和感でやめる勇気が、最短の上達です。
よくある質問(50〜70代の方から)
Q. ウォーキングだけでも転倒予防になりますか?
A. もちろん効果はあります。ただし足の“指先”が弱いと最後の踏ん張りが効きません。内在筋トレ(SFEなど)はアーチ機能と動的バランスの改善にプラスです。PMC
Q. タオルギャザーだけで十分?
A. 導入には有効ですが、比較研究ではSFEのほうが内在筋を的確に使わせやすく、バランス改善も大きいと示唆されています。SFEを主役、タオルは補助が効率的。Human Kinetics Journals
Q. 何週間で変化を感じますか?
A. 個人差はありますが、4週間程度で「踏ん張りやすさ」「ふらつきの減少」を感じやすい傾向があります。バランス訓練と併用すると伸びが早いケースが多いです。PMC
Q. 片脚10秒はとても無理…
A. 無理にやらなくて大丈夫。両足SFE→壁タッチ片脚3秒から。10秒テストは目安であり、危険を感じたら中止を。British Journal of Sports Medicine
まとめ:転ばない足は、指先からつくる
- 足趾力の弱さ/足趾の変形は転倒と関連。足部内在筋は年齢が高くても鍛え直せる。PubMed+1
- SFE(ショートフット)は短期でもバランス改善が期待でき、タオルギャザーより内在筋を狙い撃ちしやすい。Human Kinetics Journals
- バランスそのものは健康全般の指標にもなり得ます。片脚10秒はあくまで目安ですが、安全に計測すれば日々の成長が見える指標です。PubMed
今日から5〜8分、週3〜5日。
“母趾でそっと床を押す”感覚を取り戻せば、つまずきは確実に減らせます。
PONOでは足の状態評価→フォーム指導→生活動作への落とし込みまで医療×運動で伴走します。気になる方はいつでもご相談ください。
参考(主要エビデンス)
- McKeon PO, et al. The foot core system(BJSM)——内在筋を“コア”として捉える枠組み。PubMed+1
- Mickle KJ, et al. 足趾力・足趾変形と転倒の関連(Clinical Biomechanics 2009)。PubMed
- Mickle KJ, et al. 高齢者は足趾屈筋力が約35%低い/内在筋が萎縮(JOSPT 2016)。JOSPT+1
- Wei Z, et al. 内在筋トレでアーチ機能・動的バランス改善(Systematic review, 2022)。PMC
- Lynn SK, et al. SFEはタオルより内在筋を賦活しやすく、4週でバランス改善(J Sport Rehabil 2012)。PubMed+1
- Moon D, et al. SFE併用で静的・動的バランスがより改善(RCT, 2021)。PMC
- Araújo CG, et al. 片脚10秒と死亡リスクの関連(観察研究)(BJSM 2022)。British Journal of Sports Medicine
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