筋トレの適正な回数と頻度|「週何回?何回できる重さ?」を論文ベースで最適化する方法
はじめに:「10回3セット」が正解だと思っていた、あの頃の自分へ
筋トレを始めると、だいたい同じ質問に行き着きます。
- 1セットは何回が正解?
- 週に何回やれば効く?
- 毎日やった方が早い?休むと筋肉が逃げる?
気持ちは分かります。筋肉って見えないので、つい「回数と頻度」で安心したくなるんです。
でも筋肉はわりとドライで、こう言います。
「回数と頻度“だけ”決めても、成果は出ません。
週あたりの総量(どれだけやったか)と、どれだけキツくやったか(努力度)が大事です。」
この記事では、回数(レップ数)と頻度(週何回)を、論文・ガイドラインの範囲で“曲解せず”に整理し、最後にそのまま使えるテンプレに落とします。
用語の整理:回数と頻度の前に「週あたりのセット数」を押さえる
話がややこしくなる原因は、みんな「頻度」ばかり見て、実は重要な“黒幕”を見落とすことです。
- 回数(reps):1セットで何回できるか
- 頻度(frequency):週に何回トレーニングするか(または同じ筋肉を週に何回刺激するか)
- ボリューム(volume):ざっくり言うと「週あたり何セットやったか」(筋肥大の議論で特に重要)
筋肥大については、週あたりのセット数が増えるほど筋肥大が大きくなる“用量反応”を示したメタ解析があります(ただし無限に伸びるわけではなく、現実では回復が上限になります)[3]。
つまり頻度は、「筋肉に魔法をかけるボタン」ではなく、**週のセット数を“配るための道具”**として考えると失敗しにくいです。
結論を先に:回数と頻度はこう決める
迷ったら、判断軸はこの順番が最短です。
目的 → 週あたりセット数(総量) → 回復に合わせて頻度で分配 → 回数(負荷)で仕上げる
- 目的が筋力なら「重さ(高負荷)」が重要
- 目的が筋肥大なら「週あたりセット数+限界に近い努力」が重要
- 健康目的なら「続く頻度(週2〜3回)」が強い
この考え方は、ACSM(米国スポーツ医学会)の抵抗トレーニング指針でも、経験レベルに応じた負荷・回数・セット・頻度を“モデル”として整理しています[1]。
また、日本の身体活動・運動ガイド(厚労省)でも、健康づくりとしての筋力トレーニングは**週2〜3日(休息日を念頭)**が推奨値として示されています[8][9]。
回数(レップ数)は「目的別」で決めるのが正解
筋力アップが目的:低回数・高負荷が有利になりやすい
最大筋力(1RM)を伸ばしたいなら、基本は重い負荷が必要です。
低負荷と高負荷の比較メタ解析では、最大筋力は高負荷の方が伸びやすい一方、筋肥大は条件次第で同程度になり得る、という整理がされています[2]。
ACSMの指針でも、筋力向上では高負荷・低回数域(例:1〜6回相当)を含めた計画が推奨されています(経験者ほど、強度の幅を使う)[1]。
イメージ:
筋力は「重い荷物を運ぶ技術」。軽い荷物で練習しても基礎体力はつきますが、最終的に重い荷物を運ぶなら、やはり重い荷物にも触れておきたい——そんな感じです。
筋肥大が目的:「回数帯」は広い。ただし“ラクすぎ”はダメ
筋肥大=8〜12回、というのは便利な目安ですが、“唯一の正解”ではありません。
メタ解析では、高負荷でも低負荷でも、適切な努力度で行うなら筋肥大は同程度になり得ることが示されています[2]。
ただし注意点があります。
低負荷で筋肥大を狙う場合、フォームが崩れない範囲で**限界に近い努力(かなりキツい領域)**が必要になりやすい。
「軽い重量でニコニコ20回」は、健康体操としては素晴らしいですが、筋肥大の刺激としては不足しがちです。
筋持久力・健康目的:まずは“安全に続く回数帯”が最優先
健康目的では、強度を上げすぎて関節や腱を痛めるのが最ももったいない失敗です。
ACSMの指針では、初心者に対して**中等度の負荷で8〜12回(または10〜15回)**など、技術習得と安全性を両立する回数帯を示しています[1]。
厚労省の運動ガイドでも「休息日を念頭に、週2〜3日」のように、継続と安全を強く意識した設計になっています[8][9]。
「限界までやるべき?」問題:毎回の“オールアウト”は必須ではない
SNSで燃えがちなテーマですが、ここは落ち着いていきます。
レップの限界(repetition failure)まで行う群と、限界まで行かない群を比較した系統的レビュー/メタ解析では、全体として筋力・筋肥大に有意差がないという結論が示されています[7]。
つまり、少なくとも現時点のエビデンスでは、
「限界まで追い込まないと筋肉はつかない」
は言い過ぎです。
実務的には、次のように使うのが合理的です。
- 基本は「あと1〜3回できそう」で止める(フォームが崩れにくい)
- 余裕がある日に、最後の1セットだけ“きつめ”にする
- 疲労が溜まっている週は、限界まで行かない(継続が勝ち)
筋肉は頑張りを評価しますが、関節と腱は“無言で退職”することがあるので要注意です。
頻度(週何回)が効く仕組み:結局「週の総量をどう配るか」
筋肥大:ボリュームを揃えると、頻度の差は小さくなりやすい
筋肥大における頻度を扱ったメタ解析では、週あたりの総量(ボリューム)を揃えると、頻度の影響は意味のある差になりにくいという結論が示されています[5]。
一方で、ボリュームを揃えていない研究群を含めると、高頻度がやや有利に見えることもあり、ここは「高頻度が優秀」ではなく「高頻度にすると総量を増やしやすい/質を保ちやすい」が本質です[5]。
また、2016年のメタ解析では、週1回より週2回以上で筋肥大が大きいという結果も報告されていますが、研究の積み上げにより「ボリュームを揃えたときどうか?」へ議論が精密化してきた流れがあります[4][5]。
筋力:頻度を上げても、ボリュームが同じなら上乗せは限定的になりやすい
筋力についてのメタ解析でも、週あたりの総量を揃えると、高頻度が必ずしも強さの上乗せにならないことが示されています[6]。
要するに「週5でやれば強くなる」ではなく、「週5で質と総量を積めるなら強くなりやすい」。主語は頻度ではなく設計です。
じゃあ結局、週あたり何セット?週何回?(実用の目安)
ここからが“コピペして使える”部分です。目的別に、現実的な落とし所を提示します。
筋肥大の目安:まずは「1筋群あたり週5〜9セット」→慣れたら「週10セット以上」を検討
週あたりのセット数と筋肥大の関係を調べたメタ解析では、週のセット数が増えるほど筋肥大が大きい傾向が示され、カテゴリ比較(例:<5、5〜9、10+セット/筋群/週)でも“増やすほど伸びやすい”方向が示されています[3]。
ただし、いきなり週10セット以上を全身に入れると、筋肉より先に生活が崩れる人が多いです。
まずは「週5〜9セット/筋群」あたりから入り、回復できているなら増やす。これが実務上の勝ち筋です。
頻度の決め方:週のセット数を“回復が追いつく形”で分ける
- 週1回:1回あたりのセット数が多くなりやすく、後半の質が落ちることがある
- 週2回:多くの人にとって、総量と回復のバランスが取りやすい
- 週3回以上:総量を増やしたい/1回の疲労を下げたい人に有利になりやすい(ただし忙しさが敵)
筋肥大の観点では「頻度そのもの」より「週の総量を適切に積めるか」が重要になりやすい、という整理が強いです[5]。
筋力でも同様に、総量を揃えると頻度差が大きく出ないケースが多いとされています[6]。
目的別テンプレ:回数×頻度の“無難に強い”組み方
健康づくり・運動習慣が目的(最優先:安全と継続)
- 頻度:週2〜3日(休息日を入れる)[8][9]
- 回数:1セットあたり**8〜12回(または10〜15回)**を狙える負荷[1]
- セット:各種目1〜3セットから開始[1]
- 追い込み:毎回の限界は不要。フォームが崩れない範囲で
おすすめの考え方:
「週2〜3回」は少なく見えますが、健康づくりでは十分“強い”頻度です。
筋肉は“やる気の爆発”より“定期便”が好きです。
筋肥大が目的(見た目・体づくり)
- 頻度:1筋群あたり週2回が扱いやすい(週3回以上でもOK)
- 回数:広い範囲でOK(重め〜軽め)。ただし“ラクすぎ”は避ける[2]
- 週セット数:まず週5〜9セット/筋群 → 慣れたら週10セット以上を検討[3]
- 追い込み:限界は必須ではない(毎回は不要)[7]
現実的な工夫:
週10セットを1日に詰め込むと、後半が雑になりやすい。週2回に分けると「同じ総量」でも質が保ちやすい。頻度はこのために使います[5]。
筋力が目的(より重い重量を挙げたい)
- 頻度:全身なら週2〜3回、分割なら週3〜4回以上など、回復に合わせて[1]
- 回数:低回数・高負荷(例:1〜6回相当)を計画に含める[1][2]
- セット:経験に応じて増やす(上級者はセット数が増えるモデル)[1]
- 追い込み:毎回限界は不要。重い日は特にフォーム優先[7]
よくある失敗(ここを直すと伸びが早い)
- 回数ばかり追って、週のセット数(総量)が足りない/逆に多すぎる
- 週1回に詰め込みすぎて、後半のフォームが崩壊
- 毎回オールアウトして回復が間に合わない(翌週の質が落ちる)[7]
- 「週○回」が先で、目的と回復が後回し
筋トレは、やる気の量で決まるというより、疲労と回復の収支で決まります。筋肉は働き者ですが、ブラック企業には長く勤めません。
まとめ:回数と頻度は「目的」「週の総量」「回復」で決める
- 回数は目的で決める(筋力=高負荷寄り、筋肥大=幅広い)[1][2]
- 頻度は「週の総量を質高く積むため」に使う(魔法ではない)[5][6]
- 筋肥大は週のセット数が重要になりやすい(まず5〜9、次に10+)[3]
- 限界までの追い込みは必須ではない(毎回は不要)[7]
- 健康目的なら週2〜3日が国内推奨として現実的[8][9]
参考文献(国内外)
[1] American College of Sports Medicine. Progression Models in Resistance Training for Healthy Adults. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(3):687–708. doi:10.1249/MSS.0b013e3181915670
[2] Schoenfeld BJ, Grgic J, Ogborn D, Krieger JW. Strength and hypertrophy adaptations between low- vs. high-load resistance training: a systematic review and meta-analysis. J Strength Cond Res. 2017;31(12):3508–3523. doi:10.1519/JSC.0000000000002200
[3] Schoenfeld BJ, Ogborn D, Krieger JW. Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass: a systematic review and meta-analysis. J Sports Sci. 2017;35(11):1073–1082. doi:10.1080/02640414.2016.1210197
[4] Schoenfeld BJ, Ogborn D, Krieger JW. Effects of Resistance Training Frequency on Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2016;46(11):1689–1697. doi:10.1007/s40279-016-0543-8
[5] Schoenfeld BJ, Grgic J, Krieger J. How many times per week should a muscle be trained to maximize muscle hypertrophy? J Sports Sci. 2019;37(11):1286–1295. doi:10.1080/02640414.2018.1555906
[6] Ralston GW, Kilgore L, Wyatt FB, Buchan D, Baker JS. Weekly Training Frequency Effects on Strength Gain: A Meta-Analysis. Sports Med Open. 2018;4(1):36. doi:10.1186/s40798-018-0149-9
[7] Grgic J, Schoenfeld BJ, Orazem J, Sabol F. Effects of resistance training performed to repetition failure or non-failure on muscular strength and hypertrophy: A systematic review and meta-analysis. J Sport Health Sci. 2022;11(2):202–211. doi:10.1016/j.jshs.2021.01.007
[8] 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023(本文)(筋力トレーニングを週2〜3日等)
[9] 厚生労働省. 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:筋力トレーニングについて(休息日を念頭に週2〜3日を推奨)
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