「更年期と筋肉の関係|ホルモンの変化が体型・代謝に与える影響とは?」

「最近、体がなんだか変わってきた」——その変化、もしかすると“筋肉”からかもしれません
「なんだか疲れやすくなった」
「体重は変わらないのに、体型が崩れてきた気がする」
「以前のように体が動かない、代謝が落ちたような気がする」
そんなふうに、“自分の体が少しずつ変わってきた”という感覚をお持ちではないでしょうか。
40代後半〜50代にかけて、女性の体は大きな節目を迎えます。それが更年期です。
更年期と聞くと、ホットフラッシュや気分の浮き沈み、月経の変化などを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は筋肉や代謝の変化も密かに進んでいます。
女性の健康を支えるホルモン「エストロゲン」は、単に生殖機能を調整しているだけではありません。
筋肉の合成、脂肪の分布、エネルギー代謝、骨の健康に至るまで、身体全体の“土台”を支えているホルモンでもあるのです。
このエストロゲンが更年期に急激に減少することで、
- 筋肉量が減りやすくなる
- 基礎代謝が低下する
- 内臓脂肪が増えやすくなる
- 疲れやすくなる
といった変化がじわじわと現れてきます。
ただし、それは「仕方のないこと」ではありません。
変化を理解し、適切にケアすることで、筋力や代謝を維持・回復することは十分に可能です。
本記事では、
- 女性ホルモンが筋肉や代謝にどんな働きをしているのか
- 更年期に体がどう変化するのか
- そしてそれにどう向き合えばよいのか
を、理学療法士・身体の専門家の視点から、分かりやすく丁寧に解説していきます。
あなた自身の体にもっと優しく、もっと前向きになれるようなヒントが、きっと見つかるはずです。
女性ホルモンと筋肉の密接な関係
女性ホルモン、特に**エストロゲン(卵胞ホルモン)**は、生理周期や妊娠だけでなく、筋肉や骨、脂肪組織など、全身の代謝にも深く関わっていることがわかっています。
エストロゲンの主な働き(筋肉・代謝に関連するもの)
- 筋たんぱく質の合成を促進し、筋肉量の維持をサポート
- 筋肉への血流を促し、回復力やパフォーマンス向上に貢献
- 骨の新陳代謝を調整し、骨密度の維持を助ける
- 脂肪の分布をコントロールし、内臓脂肪の蓄積を防ぐ
このように、エストロゲンは単に“女性らしさ”を保つホルモンではなく、運動器系やエネルギー代謝を調整する重要な調整因子でもあるのです。
更年期に起こる変化
更年期には卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌が急激に減少します。
このホルモン変化は、以下のような身体的変化を引き起こします。
- 筋肉量の減少(特に下肢・体幹)
- 基礎代謝の低下 → 太りやすくなる
- 骨密度の低下 → 骨粗しょう症リスクの上昇
- 内臓脂肪の増加 → メタボリックシンドロームのリスク上昇
とくに注目すべきなのは、「筋肉量の減少と基礎代謝の低下」です。
筋肉はエネルギーを消費する“代謝のエンジン”ですから、それが減ることで消費エネルギーが落ち、**「食べていないのに太る」**と感じる現象につながります。
さらに、筋肉量が減ると体の支えが弱くなり、関節への負担が増加。腰痛や膝の痛み、姿勢の崩れといった運動機能の低下にもつながりやすくなります。
更年期に起こる筋肉と代謝の変化:見た目・体感・健康リスク
更年期を迎えると、体の内側では静かに、しかし確実に「変化」が進んでいきます。
その中心にあるのが、筋肉量の減少と代謝機能の低下です。
見た目の変化:体型が“なんとなく変わってきた”理由
「体重はそれほど増えていないのに、お腹まわりが気になるようになった」
「服のシルエットが以前と合わなくなった」
このような声をよく耳にします。これは単なる脂肪の増加ではなく、筋肉量が減ることでボディラインが崩れてきているサインでもあります。
とくに減りやすいのが、**下半身や体幹(インナーマッスル)**の筋肉。これらが弱くなると、
- 骨盤が前に傾いて下腹が出やすくなる
- 背中が丸まり、猫背や肩こりが悪化
- 全体的に“ハリ”のない、たるんだ印象に
といった変化が起こります。
体感の変化:「以前より疲れやすい」は筋力低下のサイン
筋肉量の減少は、見た目だけでなく**“体感”にも影響**を与えます。
- 長時間立っていられない
- 階段がしんどくなった
- 以前より「疲れが取れにくい」
これらは、持久力や筋持続力の低下によるもので、筋肉の衰えを知らせる“体の声”ともいえます。
特に更年期は、睡眠の質の低下や自律神経の乱れも重なるため、筋力の低下と疲労感が相互に悪循環を生みやすいのが特徴です。
健康リスクの変化:メタボ・サルコペニア・骨粗しょう症
筋肉と代謝の低下は、将来的な健康リスクとも直結しています。
- 内臓脂肪の増加(メタボリックシンドローム)
→ インスリン抵抗性が高まり、糖尿病・高血圧・脂質異常症のリスク上昇 - サルコペニア(加齢性筋肉減少症)
→ 日常生活の活動レベルが低下し、介護予備軍となるリスク - 骨粗しょう症
→ 筋肉の刺激が減ることで骨密度も低下し、骨折の危険性が高まる
これらはすべて、「運動器の衰え」から始まる一連の連鎖反応とも言えるのです。
更年期に感じる身体の違和感や不安は、決して気のせいではありません。
しかし、正しい知識と対策を知ることで、この時期を“健やかな変化のチャンス”に変えることも十分可能です。
更年期の筋力・代謝低下にどう向き合うか:運動・食事・生活習慣のポイント
更年期による筋肉量の減少や代謝機能の低下は、自然な生理的変化です。
しかし、それに対して“何もしない”ことが、実は一番のリスクになります。
このセクションでは、今日から取り組める実践的な対策を、3つの柱で整理します。
① 筋力維持に効果的な運動
更年期において重要なのは、「筋肉を減らさないこと」。そのために最も効果的なのが、週に2〜3回の筋力トレーニングです。
おすすめの筋トレ種目(自重中心):
- スクワット:下肢全体と体幹を効率よく鍛える
- ヒップリフト:お尻と体幹を安定させ、骨盤の位置を整える
- プランク:体幹の支持力を高め、姿勢の安定に貢献
→ いずれも関節に優しく、全身の基礎筋力を維持するのに適した種目です。
有酸素運動もバランスよく:
- ウォーキング・軽いジョギング・エアロバイクなど
→ 血流改善・代謝アップ・自律神経の安定にも効果的。
筋トレと有酸素運動をセットで行うことが、代謝の維持とホルモンバランス安定の鍵になります。
② 食事:筋肉と代謝をサポートする栄養
食事では、次の栄養素を意識して摂取しましょう。
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
---|---|---|
たんぱく質 | 筋肉の材料。不足しやすい。 | 鶏むね肉、卵、納豆、豆腐、鮭 |
ビタミンD | 骨の健康、免疫、筋力維持にも関与 | きのこ類、サバ、鮭、日光浴 |
カルシウム | 骨密度維持に必須 | 牛乳、ヨーグルト、小魚、小松菜 |
鉄分 | 疲労感や貧血の予防 | 赤身肉、レバー、ひじき、ほうれん草 |
更年期には、**“食べる量は減らしても、栄養の質は落とさない”**ことがポイントです。
③ 生活習慣:睡眠・ストレス・ホルモン環境
エストロゲンの分泌は、ストレスや睡眠不足でさらに不安定になります。
そのため、生活全体の見直しも重要です。
- 質の良い睡眠を確保(寝る前のスマホやカフェインを避ける)
- リズムのある生活(毎日の同じ時間に食べ、動き、休む)
- 趣味や交流の時間を大切にする(ストレスホルモンを抑制)
心と体はつながっています。“心地よい”と感じる習慣こそが、ホルモン環境の安定に最も効果的です。
まとめ|更年期は“衰え”ではなく、“気づき”のタイミング
更年期は、誰にとっても避けられない人生の節目です。
身体に起こる変化は決して“老化のサイン”ではなく、体の声に気づくチャンスでもあります。
エストロゲンの減少によって筋肉量が減り、代謝が落ちることは自然なプロセス。
しかし、それを「仕方がない」と受け入れるか、「ここから整えていこう」と向き合うかで、5年後・10年後の健康状態は大きく変わってきます。
今日からできる小さな一歩
- 階段を避けずに登ってみる
- 夕食にゆで卵や納豆を加える
- ストレッチを1分でも継続する
- 自分の体の変化に「気づく時間」を作る
こうした日々の積み重ねが、**筋肉の維持や代謝の回復につながる“最も効果的な更年期ケア”**です。
最後に
変化を恐れず、受け止めながら整えること。
それが、更年期を前向きに乗り越えるための第一歩です。
あなたの体は、今日からでも変わり始めます。
“自分のペース”で、“自分らしく”健康と向き合っていきましょう。