Blog

腰痛との付き合い方——「安静が一番」ではない理由と、今日からできる対処

happiponpono

腰が重い、朝起きると痛む、長く座っていると立ち上がりがつらい。腰痛は、多くの方が一度は経験する、とても身近な不調です。ひと昔前は「腰が痛いときは安静に」と言われましたが、近年の考え方は少し変わってきています。この記事では、腰痛がなぜ起こるのかをやさしく解説し、安静と運動のバランス、そして見落としてはいけない受診のサインを、理学療法士の視点で整理します。


はじめに

「重い荷物を持った拍子に、腰がピキッときた」「デスクワークが続くと、腰が固まって伸ばしづらい」「朝、起き上がるときに腰が痛む」——こうした腰の不調は、年齢を問わず、本当に多くの方が抱えています。

腰痛というと、「とにかく安静にして、痛みが引くのを待つもの」というイメージを持つ方が少なくありません。ですが、近年の研究や診療ガイドラインでは、その考え方が見直されてきています。

先に大切な点をお伝えします。腰痛の多くは、命に関わるような重い病気ではなく、時間の経過とともに軽快していくものです。そして、痛みが強い時期を過ぎたら、じっと安静にし続けるよりも、痛みの範囲で少しずつ動く方が回復に役立つと考えられるようになっています。一方で、ごく一部には、早めの受診が必要な腰痛もあります。この見分け方を知っておくことが、安心につながります。


なぜ起こるのか——腰痛の多くは「原因を一つに特定しにくい」

腰は、背骨(腰椎)、その間のクッション(椎間板)、関節、そして体を支える筋肉や靭帯が組み合わさって、上半身を支え、前後左右に動く役割を担っています。立つ、座る、かがむ、持ち上げるといった動作のたびに、腰にはさまざまな方向の負担がかかります。

意外に思われるかもしれませんが、腰痛の多くは、レントゲンなどの検査をしても「これが原因」とはっきり一つに特定できないタイプのものです。これは非特異的腰痛と呼ばれます。筋肉や関節への負担、長時間の同じ姿勢、疲労などが複雑に関わっていると考えられていますが、必ずしも「どこかが壊れている」わけではありません。ですから、痛みがあること自体が、必ずしも深刻な損傷を意味するわけではない、という点はおさえておきたいところです。

一方で、腰痛のなかには、原因がはっきりしているタイプもあります。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症のように神経の症状をともなうもの、そして頻度は高くないものの、背骨以外の病気(内臓や血管などの問題)が腰の痛みとして現れることもあります。だからこそ、「ただの腰痛」と決めつけず、後で述べる危険なサインがないかを確認しておくことが大切です。

腰痛が長引きやすい・くり返しやすい要因としては、過去の腰痛の経験、加齢、体重、喫煙、そして気分の落ち込みやストレスなどが関わると報告されています。腰痛は体の問題だけでなく、生活習慣や心の状態とも関わる、幅の広い症状だといえます。


まず確認したい、受診の目安となるサイン

腰痛の多くは心配のいらないものですが、次のようなサインがある場合は、自己判断で様子を見るより、早めに医療機関を受診することがすすめられます。

足に力が入りにくい、しびれが強い、または広がってくる。排尿・排便のコントロールがしにくくなった。安静にしていても強く痛む、夜間に痛みで目が覚める。発熱をともなう。原因のはっきりしない体重減少がある。転倒や強い衝撃のあとに激しく痛む。がんの治療歴がある方で新たに強い腰痛が出た。胸や背中の痛み、腹痛、冷や汗などをともなう。

これらは、神経や背骨以外の病気が関わっている可能性を確認しておいた方がよいサインです。とくに、足の脱力や排尿・排便の障害をともなう場合は、早急な対応が必要なこともあるため、ためらわず受診してください。こうした危険なサインがなく、痛みが腰まわりに限られている場合は、次に述べるようなセルフケアで様子を見ていけることが多いとされています。


研究やガイドラインではどう整理されているか

腰痛については、日本整形外科学会と日本腰痛学会が診療ガイドライン(腰痛診療ガイドライン2019)を示しています。ここで、以前の常識から見直された点がいくつかあります。

まず、安静についてです。かつては「痛いときは寝て安静に」が基本とされていましたが、現在では、必要以上の安静はかえって回復を遅らせる可能性があると考えられています。痛みの強い急性期でも、ベッドで安静にし続けるより、痛みに応じて日常の活動をできる範囲で続ける方が、痛みの軽減や回復に役立つとされています。

次に、運動療法です。とくに慢性的に続く腰痛に対しては、運動療法が有用であるとして推奨されています。どの運動が絶対によいと一つに決まっているわけではなく、続けられる運動を無理なく行うことが大切だと考えられています。

さらに、腰痛は体だけの問題ではないという視点も重視されています。痛みへの過度な不安や、「動くと悪化するのでは」という恐れが、かえって腰痛を長引かせることがあるため、正しく理解し、安心して体を動かしていくことが回復を支えるとされています。薬物療法などは、症状や時期に応じて医師の判断で用いられます。

ここで挙げたのは一般的な整理であり、実際の対応は、症状や経過によって変わります。とくに神経症状をともなう場合などは、自己判断せず、専門家に相談してください。


誤解されやすいポイント

「腰が痛いときは、とにかく寝て安静にするのが一番」というのは、今では必ずしも正しくありません。強い痛みの数日間に無理を避けるのは大切ですが、その後まで動かずにいると、筋力や柔軟性が落ち、かえって回復が遠のくことがあります。

「痛い=どこか壊れている」とも限りません。前述のとおり、腰痛の多くは、検査で明確な損傷が見つからないタイプです。痛みがあることと、深刻な病気があることは、必ずしも同じではありません。

「一度腰を痛めたら、もう重い物は一生持てない」というのも思い込みです。適切に回復し、体の使い方を整えれば、多くの方は日常の動作に戻っていけます。

「コルセットをずっと着けていれば安心」とも言い切れません。つらい時期に一時的に使うことはありますが、長く頼りすぎると、腰を支える筋肉が働きにくくなることもあります。使い方は状態に合わせて考えることが大切です。


今日からできる対処

ここでご紹介するのは、前述の危険なサインがない、腰まわりに限られた痛みに対する一般的なセルフケアです。痛みが強いときや神経症状があるときは、まず医療機関にご相談ください。いずれも、痛みが強く出ない範囲で、無理なく行うのが基本です。効果の感じ方には個人差があります。

1. 痛みの範囲で、日常の活動を続ける

強い痛みの時期を除き、できる範囲で歩いたり、普段の生活動作を続けたりすることが、回復の助けになると考えられています。「動いてはいけない」と身構えず、痛みが強くならない範囲で体を動かしてみましょう。

2. 腰にやさしく、股関節やお尻を動かす

あおむけで両膝を立て、両膝をゆっくり左右に倒す、抱えるように膝を胸に近づける、といった動きで、腰まわりをやさしくほぐします。反動をつけず、心地よい範囲で。痛みが出る動きは避けてください。

3. お尻と体幹をゆるやかに働かせる

あおむけで膝を立て、お尻をゆっくり持ち上げて数秒キープし、下ろします(お尻の上げ下げ)。腰を反らしすぎないように、無理のない高さで。体を支える筋肉をやさしく働かせる運動です。

4. 長時間の同じ姿勢を避ける

座りっぱなし・立ちっぱなしは腰の負担になります。30分から1時間に一度は姿勢を変え、軽く歩いたり伸びをしたりしましょう。座るときは浅く腰かけすぎず、背もたれを使うと楽になります。

5. 持ち上げ動作を見直す

床の物を持ち上げるときは、腰から曲げるのではなく、膝を曲げてしゃがみ、体に近づけて持ち上げると、腰の負担を減らせます。重い物は無理をせず、分ける・道具を使うことも大切です。


まとめ

腰痛について、押さえておきたい点を整理します。

腰痛の多くは、原因を一つに特定しにくい非特異的なもので、深刻な病気とは限りません。以前の「安静第一」から考え方は変わり、痛みの範囲で活動を続けること、慢性的な腰痛には運動療法が役立つことが重視されています。一方で、足の脱力やしびれ、排尿・排便の障害、安静時痛や夜間痛、発熱などをともなう場合は、早めの受診が必要です。腰痛は体だけでなく、生活習慣や不安とも関わるため、過度に怖がらず、正しく理解して付き合っていくことが回復を支えます。

腰痛は、つらいときには気持ちまで沈みがちですが、多くは適切に付き合っていける症状です。まずは危険なサインがないかを確かめ、問題がなければ、痛みの範囲で少しずつ体を動かすことから始めてみてください。


参考文献

  • 日本整形外科学会・日本腰痛学会(監修)「腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)」
  • 日本整形外科学会「腰痛」症状・病気をしらべる(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/low_back_pain.html)
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(運動器・ロコモティブシンドローム関連情報)

執筆者

Medical Fitness PONO
理学療法士・認定理学療法士/健康運動指導士

本記事は、理学療法士が一般の方向けにわかりやすく解説することを目的とした情報提供であり、個別の診断・治療を行うものではありません。理学療法士は医師ではなく、記事の内容は診断・治療の代わりにはなりません。腰痛には、背骨以外の病気が原因となっていることもあります。足のしびれや脱力、排尿・排便の障害、安静時の痛みや夜間痛、発熱をともなう場合などは、自己判断せず、医療機関にご相談ください。効果の感じ方には個人差があります。

ABOUT ME
川口幸穂
川口幸穂
株式会社happipon
代表取締役社長
2019年医師免許取得
父が狭心症でカテーテル治療後に運動療法を続ける場がないことをきっかけに、医師監修の今までにない訪問パーソナルトレーニングを立ち上げました。 medical fitness PONOは全トレーナーが理学療法士による訪問パーソナルトレーニングサービスです。 体力に自身のない方や持病をお持ちの方々向けに医師監修で安全かつ効果的なトレーニングを提供します。 専門家が個別プランを作成し、健康な生活をサポートし、美しい体作りをお手伝いします。 PONOで楽しく健康な未来を手に入れるお手伝いができれば幸いです
2022年、2023年ティラノサウルスレースin有明浜開催。小児医療×地域イベントのコラボレーションを実現。第9回JACEイベントアワード受賞
Recommended
記事URLをコピーしました