Blog

変形性膝関節症(膝OA)とは——膝の痛みの原因と、運動でできる付き合い方

happiponpono

立ち上がるときに膝が痛む、階段の上り下りがつらい、歩き始めの一歩がこわばる。こうした膝の痛みで最も多い原因のひとつが、変形性膝関節症(膝OA)です。日本では多くの方が抱えている、とても身近な症状です。この記事では、膝OAがなぜ起こるのかをやさしく解説し、運動や生活の工夫でできる付き合い方、そして受診の目安を、理学療法士の視点で整理します。「歳のせい」とあきらめる前に、できることを一緒に確認していきましょう。


はじめに

「椅子から立ち上がる瞬間、膝がズキッと痛む」「階段を下りるのがこわい」「正座ができなくなった」「歩き始めはこわばるけれど、しばらくすると楽になる」——こうした膝の変化に心当たりのある方は、とても多いと思います。

変形性膝関節症は、日本国内で症状のある方だけでも多数にのぼるとされ、加齢とともに増えていく、身近な運動器の症状です。女性にやや多い傾向があることも知られています。

先に大切な点をお伝えします。膝OAは、進行が比較的ゆるやかで、多くは日常生活の工夫や運動といった、手術によらない方法(保存療法)と付き合いながら過ごしていける症状です。「変形しているから、もう歩けなくなる」と思い込む必要はありません。一方で、痛みが強い場合や急に悪くなった場合には、確認が必要なこともあります。まずは正しく知ることが、不安をやわらげる第一歩になります。


なぜ起こるのか——膝の「軟骨」というクッションの変化

膝の関節は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)が向かい合ってできています。その骨の表面は、関節軟骨というなめらかなクッションで覆われていて、これが膝の動きをスムーズにし、衝撃をやわらげています。

変形性膝関節症は、この関節軟骨が、長い年月をかけて少しずつすり減っていくことを軸に進む症状です。軟骨がすり減ると、関節の動きがなめらかでなくなり、周囲に負担がかかって、痛みや炎症、水がたまる(関節に水が生じる)といった変化が現れることがあります。進行すると、関節の形が変わり、膝が伸びにくくなることもあります。

その背景には、いくつかの要素が重なっていると考えられています。加齢に伴う軟骨の変化はその中心ですが、それだけではありません。体重が膝にかかる負担を増やすこと、筋力の低下、過去のけが(骨折、靭帯や半月板の損傷)、O脚などの脚の形、遺伝的な体質なども関わるとされています。つまり、「歳だから」の一言で片づけられるものではなく、対処できる要素も含まれているのです。

ここで知っておきたいのは、痛みの強さと、レントゲンで見た変形の程度が、必ずしも一致しないという点です。変形が目立っても痛みが軽い方もいれば、その逆もあります。だからこそ、「変形=痛みが必ず強くなる」と決めつけず、今の症状に合わせて対応していくことが大切になります。


まず確認したい、受診の目安となるサイン

膝OAの多くはゆるやかに進みますが、次のような場合は、自己判断で様子を見るより、整形外科など医療機関で一度確認することをおすすめします。

膝が急に強く腫れて、熱っぽさや赤みをともなう。安静にしていても痛む、夜間に痛みで目が覚める。膝が引っかかって伸びない、あるいはカクンと崩れる感じがある。転倒やひねりなどのけがのあとに強く痛み、体重をかけられない。発熱や原因不明の体重減少をともなう。こうしたサインは、膝OA以外の原因が隠れている可能性も含めて、確認しておいた方が安心です。

また、痛みで歩く量が減ってきた、階段や外出を避けるようになった、という変化も、生活の質に関わる大切なサインです。「まだ我慢できるから」と一人で抱えず、早めに相談することで、選べる対策の幅も広がります。診断には、問診や診察に加えて、レントゲン検査などが用いられます。


研究やガイドラインではどう整理されているか

変形性膝関節症については、日本整形外科学会が診療ガイドライン(変形性膝関節症診療ガイドライン2023)を示しています。治療は大きく、手術によらない保存療法と、手術療法に分けられ、まずは保存療法が基本とされています。

保存療法の柱として位置づけられているのが、患者さん自身が病気を理解すること(教育・生活指導)、運動療法、そして体重が多めの方における体重の管理です。運動療法は、膝まわりの筋力を整えたり、関節の動きを保ったりすることを通じて、痛みや動かしやすさの改善に役立つ可能性があると考えられています。これらに加えて、症状に応じて薬物療法や、必要に応じた装具・歩行の補助などが組み合わされます。

そして、保存療法を十分に行っても痛みや生活への支障が続く場合には、手術療法が検討されます。手術には、骨の向きを整える方法や、人工の関節に置き換える方法などがあり、状態に応じて選ばれます。

ここで押さえておきたいのは、膝OAでは、運動療法や体重管理といった、生活のなかで取り組める方法が、対策の中心に据えられているという点です。すり減った軟骨そのものを元に戻す方法は現時点で確立されていませんが、症状を抑えながら生活の質を保っていくことは、多くの場合に可能だと考えられています。なお、サプリメントや一部の自由診療については、効果や安全性が十分に確立されていないものもあるため、取り入れる前に、信頼できる情報や主治医の意見を確認することがすすめられます。ここで挙げた内容は一般的な整理であり、実際の方針は、検査結果をふまえて主治医と相談して決めていくことになります。


誤解されやすいポイント

「変形しているのだから、動かさない方がいい」と考えてしまう方がいますが、これは必ずしも正しくありません。強い痛みのある時期には安静が必要なこともありますが、痛みが落ち着いているのに動かさずにいると、筋力が落ち、かえって膝を支える力が弱まることがあります。

「軟骨がすり減っているから、必ず痛い」とも言い切れません。前述のとおり、変形の程度と痛みの強さは一致しないことがあります。

「一度すり減った軟骨は、運動で元に戻る」というのも、正確ではありません。運動の目的は、軟骨を再生させることではなく、膝を支える筋力を整え、動きを保ち、痛みや生活のしづらさをやわらげることにあります。

「痛いのを我慢して歩けば鍛えられる」という考え方も、膝OAではおすすめできません。痛みを押して無理に負荷をかけると、炎症を強めることがあります。大切なのは、痛みの出ない範囲で、続けられる運動を選ぶことです。


今日からできる、膝との付き合い方

ここでご紹介するのは、強い腫れや前述の受診サインがない場合の、一般的なセルフケアです。痛みが強いときや原因がはっきりしないときは、まず医療機関にご相談ください。いずれも、痛みが出ない範囲で、無理なく行うのが基本です。効果の感じ方には個人差があります。

1. 太ももの前を鍛える(膝に負担をかけずに)

椅子に座り、片脚をゆっくり前に伸ばして数秒とめ、ゆっくり下ろします。膝を支える太ももの前の筋肉を、関節に負担をかけずに働かせる方法です。左右各10回ほどを目安に、反動をつけず行ってください。

2. 膝の裏でタオルを押す

床やベッドに脚を伸ばして座り、膝の下に丸めたタオルを置いて、膝でタオルを軽く押しつぶすように力を入れて数秒キープします。膝をまっすぐ保つ力を養う、負担の少ない運動です。10回ほどを目安に。

3. 膝の曲げ伸ばしで動きを保つ

椅子に座り、膝をゆっくり曲げ伸ばしします。関節をやさしく動かすことで、こわばりをやわらげ、動く範囲を保ちやすくなります。痛みのない範囲で、無理なく。

4. 体重が気になる場合は、少しずつ見直す

膝には歩行のたびに体重の何倍もの負担がかかるとされ、体重が多めの方では、その管理が膝の負担軽減につながると考えられています。ただし、極端な食事制限は体をこわす原因になります。まずは無理のない範囲で、生活を少しずつ整えることから始めましょう。持病のある方は、主治医に相談しながら進めてください。

5. 膝にやさしい生活の工夫

洋式の生活(正座を避け、椅子やベッドを使う)、手すりの活用、痛むときの杖の使用などは、膝の負担を減らす助けになります。無理に和式にこだわらず、膝を守る工夫を取り入れましょう。


まとめ

変形性膝関節症について、押さえておきたい点を整理します。

膝OAは、関節軟骨がゆるやかにすり減っていくことを軸に進む、とても身近な症状です。背景には加齢だけでなく、体重や筋力、過去のけがなど、対処できる要素も含まれます。痛みの強さと変形の程度は必ずしも一致しません。対策の中心は、運動療法や体重管理といった、生活のなかで取り組める方法です。急な腫れや熱感、安静時の痛み、夜間痛などがあるときは、早めに受診するのが安心です。

膝の痛みは、外出や趣味を遠ざけ、気持ちまで沈ませてしまうことがあります。ですが、膝OAは、正しく知り、無理のない範囲で付き合っていける症状です。「歳だから」とあきらめず、まずは痛くない範囲での運動と、膝にやさしい生活の工夫から始めてみてください。


参考文献

  • 日本整形外科学会「変形性膝関節症」症状・病気をしらべる(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/knee_osteoarthritis.html)
  • 日本整形外科学会・変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(ロコモティブシンドローム・運動器関連情報)

執筆者

Medical Fitness PONO
理学療法士・認定理学療法士/健康運動指導士

本記事は、理学療法士が一般の方向けにわかりやすく解説することを目的とした情報提供であり、個別の診断・治療を行うものではありません。理学療法士は医師ではなく、記事の内容は診断・治療の代わりにはなりません。膝の痛みには、変形性膝関節症以外の原因が隠れていることもあります。強い腫れや安静時の痛み、夜間痛、けがのあとの強い痛みなどがある場合は、自己判断せず、整形外科などの医療機関にご相談ください。効果の感じ方には個人差があります。

ABOUT ME
川口幸穂
川口幸穂
株式会社happipon
代表取締役社長
2019年医師免許取得
父が狭心症でカテーテル治療後に運動療法を続ける場がないことをきっかけに、医師監修の今までにない訪問パーソナルトレーニングを立ち上げました。 medical fitness PONOは全トレーナーが理学療法士による訪問パーソナルトレーニングサービスです。 体力に自身のない方や持病をお持ちの方々向けに医師監修で安全かつ効果的なトレーニングを提供します。 専門家が個別プランを作成し、健康な生活をサポートし、美しい体作りをお手伝いします。 PONOで楽しく健康な未来を手に入れるお手伝いができれば幸いです
2022年、2023年ティラノサウルスレースin有明浜開催。小児医療×地域イベントのコラボレーションを実現。第9回JACEイベントアワード受賞
Recommended
記事URLをコピーしました