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膝の裏が痛む——膝窩部痛の考えられる原因と、見落としてはいけないサイン

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しゃがむと膝の裏が突っ張る、歩き始めに膝の裏が痛む、正座がつらい。こうした「膝の裏側の痛み」は、意外と多くの方が経験します。膝の裏は、筋肉や腱、関節、そして血管や神経が集まる場所で、痛みの原因はひとつとは限りません。この記事では、膝の裏が痛む理由を体の仕組みからやさしく解説し、早めに相談した方がよいサインと、自分でできるケアを、理学療法士の視点で整理します。


はじめに

「立ち上がるときに、膝の裏がピキッと痛む」「階段を下りると、膝の裏側がつっぱる」「正座やしゃがみ込みがしづらくなった」——こうした膝の裏の違和感に、心当たりのある方は少なくないと思います。

膝の表側(お皿の周り)が痛むという話はよく聞きますが、膝の裏側の痛みは、原因がやや見えにくいのが特徴です。というのも、膝の裏には筋肉や腱だけでなく、関節そのものや、血管・神経も通っているためです。

先に大切な点をお伝えします。膝の裏の痛みは、その多くが筋肉や関節のこわばりからくるものですが、なかには早めに医療機関で確認した方がよいものも含まれます。ですから、まずは危険なサインがないかを知っておくことが安心につながります。そのうえで問題がなさそうであれば、やさしいセルフケアで和らげていくことができます。


なぜ起こるのか——膝の裏には、いろいろな組織が集まっている

膝の裏側(膝窩:しっか、と呼びます)は、体のなかでも構造が入り組んだ場所です。ここには、太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)の腱、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)の付け根、膝を安定させる小さな筋肉(膝窩筋)、そして関節を包む膜(関節包)が集まっています。さらに、その奥には太い血管(膝の裏の動脈・静脈)と神経も通っています。

これだけ多くの組織が狭い場所に集まっているため、膝の裏の痛みは「ここが原因」と一言で言い切りにくいのです。代表的なものとして、次のような背景が考えられます。

筋肉や腱のこわばり・疲労が関係する場合があります。長時間の座り姿勢や運動不足で太ももの裏やふくらはぎが硬くなると、膝の裏がつっぱるように感じることがあります。

関節そのものの変化が関係することもあります。加齢に伴う膝の関節の変化(変形性膝関節症)や、膝のクッション(半月板)の後方部分の傷みがあると、膝の裏側に痛みや引っかかりを感じることがあります。

膝の裏に水がたまることもあります。膝関節の中にある水分(関節液)が、膝の裏側にふくらみをつくることがあり、これはベーカー嚢腫(膝窩嚢胞)と呼ばれます。膝の関節に何らかの負担がかかっているときに生じやすいとされ、膝の裏の張りや腫れとして感じられることがあります。

まれではありますが、血管や神経に関わる原因が隠れていることもあります。これらは頻度こそ高くありませんが、見落とすと問題になりうるため、次の項で触れます。

このように、膝の裏の痛みは原因の幅が広いため、痛みが続く場合や強い場合は、自己判断だけで進めず、原因を確かめることが大切です。


まず確認したい、相談した方がよいサイン

膝の裏の痛みは多くがやさしいケアで対応できますが、次のような場合は、セルフケアを始める前に医療機関や専門職へ相談する方が安全です。

とくに注意したいのが、膝の裏やふくらはぎが急に腫れて、熱っぽさや赤み、強い痛みをともなう場合です。長時間同じ姿勢が続いたあと、手術のあと、長距離の移動のあとなどに、片脚だけにこうした症状が出たときは、血のかたまり(血栓)が関わる可能性もあるため、早めの相談が望まれます。自己判断でマッサージやストレッチをする前に、まず確認しておくと安心です。

そのほか、次のようなサインも受診の目安になります。膝が引っかかって伸びない、あるいはカクンと崩れる感じがある。安静にしていても痛む、夜間に痛みで目が覚める。膝の裏に、脈打つようなふくらみを触れる。しびれや脚の力の入りにくさをともなう。発熱や原因不明の体重減少がある。転倒やひねりなどのけがのあとに強く痛み、体重をかけられない。

これらは、必ずしも重い病気を意味するわけではありませんが、「確認しておいた方が安全」なサインです。迷ったときは、我慢するより相談する方が、結果的に近道になります。


研究やガイドラインではどう整理されているか

膝の痛み全般については、整形外科の分野で広く扱われています。膝の裏の痛みに限って言えば、原因は幅広く、筋肉・腱の問題、関節の変化、半月板、関節液のたまり(ベーカー嚢腫)などが、単独あるいは組み合わさって関わると考えられています。ひとつの数字で語りにくいのが実情です。

原因のひとつとしてよく挙がる変形性膝関節症については、日本整形外科学会が診療ガイドライン(変形性膝関節症診療ガイドライン2023)を示しています。膝の痛みへの対応では、まず運動療法や体重管理、生活の工夫といった、手術によらない方法(保存療法)が基本とされ、状態に応じて薬物療法などが組み合わされます。太ももの筋力を整える運動やストレッチ、適正な体重の維持は、痛みや動かしやすさの改善に役立つ可能性があると考えられています。

ただし、これは「膝の裏の痛みなら必ず運動で治る」という意味ではありません。原因によっては、運動よりも先に医療機関での確認が必要な場合もあります。効果や適切な方法は、痛みの背景によって変わってくる、という点はおさえておきたいところです。ここで挙げた原因や対処は一般的な整理であり、個別の診断に代わるものではありません。


誤解されやすいポイント

「膝の裏が痛いのは、歳のせいだから仕方ない」と決めつけてしまう方がいますが、これは必ずしも正しくありません。加齢による変化が関わることはありますが、筋肉のこわばりなど、対処できる要因が含まれていることも多いからです。

「ストレッチで伸ばせば、どんな膝裏の痛みも良くなる」とも言い切れません。筋肉の張りが原因であれば有効なこともありますが、関節に水がたまっている場合や、腫れをともなう場合には、強く伸ばすことがかえって刺激になることもあります。

「腫れているのは、たいしたことがない証拠」というのも誤解です。膝の裏の腫れやふくらみは、確認しておいた方がよいサインのひとつです。とくに、急に腫れた場合や、片脚だけ強く腫れている場合は注意が必要です。

「痛みがあっても、我慢して動かし続ければそのうち慣れる」という考え方も、膝の裏の痛みではおすすめできません。原因がはっきりしないまま無理を重ねると、状態が長引くこともあります。


今日からできる対策

ここでご紹介するのは、強い腫れや前述の危険なサインがない場合の、一般的なセルフケアです。痛みが強いときや原因がはっきりしないときは、まず医療機関にご相談ください。いずれも、痛みが出ない範囲で、無理なく行うのが基本です。

1. 太ももの裏をやさしく伸ばす

椅子に浅く座り、片脚を前に伸ばしてかかとを床につけ、背すじを保ったまま股関節から軽く前に倒します。膝の裏が心地よく伸びるところで20〜30秒ほど保ちます。反動をつけず、痛みが出ない範囲にとどめてください。

2. ふくらはぎを伸ばす

壁に手をつき、片脚を後ろに引いてかかとを床につけたまま、前の膝をゆっくり曲げます。後ろ脚のふくらはぎが伸びるのを感じながら20〜30秒ほど。膝の裏はふくらはぎともつながっているため、ここをゆるめると楽になることがあります。

3. 膝の曲げ伸ばしをゆっくり行う

椅子に座り、膝をゆっくり伸ばして数秒、またゆっくり曲げる、をくり返します。関節をやさしく動かすことで、こわばりがやわらぎやすくなります。左右各10回ほどを目安に、痛みのない範囲で。

4. 太ももの前を軽く働かせる

膝の下に丸めたタオルを置き、膝でタオルを軽く押しつぶすように太ももの前に力を入れて数秒キープします。膝を安定させる筋肉を、関節に負担をかけずに働かせる方法です。10回ほどを目安に。

5. 同じ姿勢を続けすぎない

長時間座りっぱなし、立ちっぱなしが続くと、膝の裏はこわばりやすくなります。30分から1時間に一度は姿勢を変え、軽く歩いたり膝を動かしたりすることを心がけましょう。


まとめ

膝の裏の痛みについて、押さえておきたい点を整理します。

膝の裏には筋肉・腱・関節・血管・神経が集まっており、痛みの原因はひとつとは限りません。多くは筋肉のこわばりや関節の変化によるものですが、なかには確認が必要なものも含まれます。とくに、片脚が急に腫れて熱や赤みがある場合は、血栓の可能性も考えて、早めに相談するのが安心です。危険なサインがなければ、太ももの裏やふくらはぎのやさしいストレッチ、膝の曲げ伸ばし、太もも前の軽い運動などが役立つことがあります。そして、痛みが強い、長引く、原因がはっきりしないときは、無理をせず専門家に相談することが大切です。

膝の裏の痛みは、正体が見えにくいぶん不安になりやすいものですが、多くは適切に整えていける症状です。まずは危険なサインがないかを確かめ、問題がなければ、今日できるやさしいケアから始めてみてください。


参考文献

  • 日本整形外科学会「変形性膝関節症」症状・病気をしらべる(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/knee_osteoarthritis.html)
  • 日本整形外科学会・変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(ロコモティブシンドローム・運動器関連情報)

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を保証するものではありません。腫れや強い痛み、気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

ABOUT ME
川口幸穂
川口幸穂
株式会社happipon
代表取締役社長
2019年医師免許取得
父が狭心症でカテーテル治療後に運動療法を続ける場がないことをきっかけに、医師監修の今までにない訪問パーソナルトレーニングを立ち上げました。 medical fitness PONOは全トレーナーが理学療法士による訪問パーソナルトレーニングサービスです。 体力に自身のない方や持病をお持ちの方々向けに医師監修で安全かつ効果的なトレーニングを提供します。 専門家が個別プランを作成し、健康な生活をサポートし、美しい体作りをお手伝いします。 PONOで楽しく健康な未来を手に入れるお手伝いができれば幸いです
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