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五十肩(肩関節周囲炎)を早くラクにするコツ

happiponpono

50〜70代向け:痛みの時期に合わせた正しい対処と運動の考え方

はじめに:ある日、肩が思ったより上がらない

五十肩の始まりは、わりと日常の小さな場面です。

  • 髪を整えようと手を上げたら痛い
  • 上着に腕を通すのがつらい
  • 背中に手が回らず、エプロンのひもが結べない
  • 夜、寝返りでズキズキして目が覚める

50〜70代では、こうした突然の肩トラブルが増えてきます。日本整形外科学会の説明でも、五十肩(肩関節周囲炎)は肩の痛みと動きの制限が起こり、夜間痛で眠れないほどになることがあるとされています(日本整形外科学会)。
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html

ここで大切なのは、五十肩は痛いから動かさないが正解の時期もある一方で、動かさないほど固まって長引きやすい面もあることです。回復を早める鍵は根性ではなく、痛みの時期と負荷の調整です。


五十肩とは何が起きているのか:肩の関節包が硬くなりやすい状態

五十肩の典型例は凍結肩(adhesive capsulitis)と呼ばれる状態です。肩関節を包む関節包(関節の袋)や周囲に炎症が起こり、線維化や癒着が進むと、肩が動きにくくなります。日本整形外科学会も、肩周囲の炎症に加えて関節包が癒着し、さらに動きが悪くなる(拘縮・凍結肩)ことを説明しています。
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html

臨床的に重要なのは、筋肉痛や腱炎よりも関節そのものの硬さが前面に出やすい点です。自分で動かしても痛くて動かないだけでなく、他人にゆっくり動かされても動きにくいことがあります。特に外旋(腕を外にひねる動き)や結帯動作(背中に手を回す動き)が強く制限されやすいのが特徴です。


まず覚えておくと失敗しにくい:五十肩は時期で対応が変わる

五十肩は、症状の主役が変わることが多く、以下の3つに分けて考えると迷いが減ります。

痛みが強い時期(炎症期)

とにかく痛い、夜に痛くて眠れないことがある、無理に動かすと痛みが増えやすい、という時期です。可動域はまだ残っている場合もあります。

硬さが目立つ時期(拘縮期)

痛みは少し落ち着く一方で、肩が上がらない、背中に手が回らない、外にひねれないなど、硬さが生活の邪魔になる時期です。

回復期

痛みが減ってきて、少しずつ動きが戻ってくる時期です。ただし放置だと戻りが遅い場合があります。

よくある失敗は、炎症期に強いストレッチをして悪化すること、拘縮期に怖くて動かさず固まることです。今どの時期なのかを意識するだけで、回復の方向性が変わります。


五十肩に似た別の病気もある:受診の目安

次の場合は五十肩と思い込まず、一度医療機関で評価をおすすめします。

  • 転倒や捻りなど、はっきりした外傷がきっかけ
  • 急に腕に力が入らない、急に上がらなくなった(腱板断裂などの可能性)
  • しびれが強い(頚椎由来が混ざることもある)
  • 熱感・腫れが強い、発熱がある

診断が合っていないと、どんな運動も遠回りになります。


研究とガイドラインで整理されている治療の選択肢

五十肩の保存療法(手術以外)は主に次の組み合わせです。

  • 患者教育(自然経過、やってよい動き・避ける動き)
  • 運動療法(関節運動・ストレッチ・肩甲帯運動)
  • 徒手療法(関節モビライゼーションなど)
  • 関節内ステロイド注射
  • 関節包拡張(ハイドロダイレーション)

治療は一つに決め打ちではなく、時期と困りごとに合わせて組み合わせます。


痛みが強い時期に助けになる:関節内ステロイド注射

海外のメタ解析では、関節内ステロイド注射は短期(0〜8週)の痛み軽減に有効だが、9〜24週では差が小さくなる傾向が示されています(Wangら 2017)。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28700506/

国内の理学療法診療ガイドライン(村木 2016)でも、運動療法にステロイド注射を組み合わせると短期(4〜6週)の疼痛軽減と機能改善が運動単独より効果的と整理され、強いエビデンスによる推奨とされています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/43/1/43_43-1kikaku_Muraki_Takayuki/_pdf

注射は治す魔法というより、痛みの山を下げて動かせる土台を作る選択肢、と理解すると納得しやすいです。


長い目で効く柱:運動療法と徒手療法

Cochraneレビュー(2014)では、徒手療法+運動(6週間)は7週時点では注射より効果が小さい可能性がある一方で、6か月・12か月では差が小さかったとまとめています。
https://www.cochrane.org/evidence/CD011275_manual-therapy-and-exercise-frozen-shoulder-adhesive-capsulitis

国内総説(坂・村木 2023)でも、凍結肩の理学療法は生活指導とストレッチ主体の運動療法が基本で、徒手療法を加える流れが述べられています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jmpt/23/1/23_51/_pdf/-char/en

村木(2016)の国内ガイドラインでは、患者教育とストレッチは中等度エビデンスで推奨、関節モビライゼーションは弱いエビデンスで推奨と整理され、痛みの強さ(過敏性)に合わせてストレッチ量を調整すべきと明記されています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/43/1/43_43-1kikaku_Muraki_Takayuki/_pdf

専門的に言うと、五十肩の運動は痛覚過敏の強さと関節包の拘縮の程度に合わせて負荷を選ぶ必要があり、同じメニューでも時期で正解が変わります。


もう一つの選択肢:関節包拡張(ハイドロダイレーション)

2023年の系統的レビューでは、ハイドロダイレーションは関節内ステロイド注射と比べて短期的に障害(disability)と他動外旋ROMがより改善する可能性が示されています(効果は少なくとも一時的)。
https://academic.oup.com/bmb/article/147/1/121/7231525

一方で、治療後の運動療法の重要性や、メリット・デメリットのバランスも述べられています。症状の強さや生活の困りごとに合わせて選択するのが現実的です。


自宅での基本:時期別にやることを分ける

痛みが強い時期(炎症期)

やること

  • 痛みが少ない範囲での軽い運動(振り子運動など)
  • 夜間痛対策(抱き枕やクッションで腕を支える)
  • 無理に上げない生活動作の工夫

やらないこと

  • 痛い方向へ強く引っ張るストレッチ
  • 反動をつけた運動
  • 痛みは我慢という考え方

硬さが目立つ時期(拘縮期)

やること

  • 痛みが許す範囲でのストレッチ(外旋・挙上・結帯)
  • 肩甲骨を動かす運動(肩だけでなく肩甲骨も大事)
  • 毎日少しずつ、1回で勝負しない

コツ

  • 翌日まで痛みが悪化するなら強すぎ
  • 10分まとめてより、2〜3分を回数分けでもOK

回復期

やること

  • 軽い筋トレ(外にひねる筋肉、肩甲骨周り)
  • 日常動作の段階的復帰(棚に手を伸ばすなど)

よくある誤解

放っておけば治る
改善する人もいるが、夜間痛や生活障害が長引くこともある。早めに設計すればラクになることがある。

痛いほど伸ばせば早い
炎症期に強い刺激は悪化しやすい。痛みの段階に合わせた負荷調整が重要(ガイドラインでも調整が推奨されている)。

注射だけで治る
短期の痛みには有効でも、動きを戻すには運動が重要(メタ解析でも短期優位で中期以降は差が小さくなる傾向)。


まとめ:50〜70代の五十肩は時期に合わせた調整で回復が変わる

  • 五十肩は肩の炎症と関節包の拘縮が関与し、痛みと可動域制限が特徴
  • まず炎症期か拘縮期かを見極めて、運動の強度を合わせる
  • ステロイド注射は短期の痛み軽減に有効で、運動の土台になり得る
  • 運動療法は中長期で使える肩を取り戻す柱
  • 迷ったら専門家に相談(診断確認も含めて)

参考文献(国内外)

国内

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ABOUT ME
川口幸穂
川口幸穂
株式会社happipon
代表取締役社長
2019年医師免許取得
父が狭心症でカテーテル治療後に運動療法を続ける場がないことをきっかけに、医師監修の今までにない訪問パーソナルトレーニングを立ち上げました。 medical fitness PONOは全トレーナーが理学療法士による訪問パーソナルトレーニングサービスです。 体力に自身のない方や持病をお持ちの方々向けに医師監修で安全かつ効果的なトレーニングを提供します。 専門家が個別プランを作成し、健康な生活をサポートし、美しい体作りをお手伝いします。 PONOで楽しく健康な未来を手に入れるお手伝いができれば幸いです
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